桂離宮からは阪急電車に乗って嵐山にある天龍寺に向かいます。
これまでに何度も訪れた嵐山、渡月橋も何度となく渡ったものですがいつ来ても風光明媚ないい所です。
天龍寺ですが、前からこうだったでしょうか、法堂と庭園が別料金なんですね。例によって禅宗寺院なうえに近年再建とあって、法堂にはあまり興味がないので今回は庭園拝観のみにしました。大方丈の外側をぐるっと回って曹源池庭園に出ますが、それはそれは素晴らしい光景が広がります。
曹源池庭園は夢窓疎石が晩年の71歳の時に作庭したもので、庭にたいして興味のなかった学生時代にも、ここにはいい印象を持っていたものです。
この庭はまず借景が素晴らしく、滝組に向かって左手に嵐山、右手には愛宕山が見えますが、手前の出島と相まって秀逸な奥行き感を演出してくれますし、こういった空間は庭と対峙している自分をとても意識しやすくしてくれて、庭が自然に心の中に入ってきます。
山の存在はとても重要なもので、日本人が古来神として崇めてきただけのものがあります。先ほど渡った渡月橋の景色にしても、背後に山がなければ相当違ったものになると思いますし、自分が小さい頃、関西から関東へ移り住んだ時に戸惑ったのは山が見えない事でした。
天龍寺庭園に戻りますが、中央にある龍門爆は非常にリズミカルかつ自然で素晴らしいものです。鯉魚石が中央にあるのが特徴ですが、下の石橋も現存する日本最古の石橋と言われています。
曹源池手前側に目を移してみると池の汀が思いのほか雅な雰囲気で、ちょっと仁和寺の御殿を彷彿させるような、修行の庭とは違った趣を感じます。
じつはこの場所は天龍寺ができる前、後醍醐天皇が営んだ「亀山殿」と呼ばれる離宮だったそうで、もしかするとその名残かも知れませんが、一方でこの部分は何度か改修を受けているとする資料もあり、無関係の可能性も。ただ、古刹を見るとつい何もなかったところに初めて創られたように思いがちですが、このように前身がある場合も多く、興味深いところです。亀山殿にしてもさらに400年ほどさかのぼった平安初期には檀林寺というお寺だったそうです。
天龍寺庭園の龍門爆には朝に美しい光が差し込むと言われていて、朝は無理にしても午前中に間に合うように来てみたのですが、あいにくの曇り空。今回嵐山はこの天龍寺だけで移動してしまうので、また次回化野や大覚寺などと一緒にゆっくり訪れたいところです。
山水に得失なし、得失は人の心にあり。-夢窓疎石-