天心山神勝寺

天心山 神勝禅寺

明王院のあとは、沼隈半島の内陸部にある神勝禅寺へと向かいます。

神勝禅寺は1965年、当時常石造船の社長だった神原秀夫氏が建立した新しい寺院。2016年9月、アートパビリオンの「洸庭」OPENをきっかけに「禅と庭のミュージアム」と名付けられ、話題にもなったことからこのお寺の存在を知りました。

新たな寺の建立そのものには、時代が変わっても開基者それぞれの思いがあり、決して否定的には捉えていませんが、当然財力のある方が手掛けられるわけで、往々にして箔をつけたいがために必要以上に広大だったり、堂塔も寄せ集めか、あるいは有名どころのレプリカのようなものであったりと、どこか新入社員のスーツ姿のような「据わり」の悪い感じから、道楽の印象が拭きれないことも否定できません。

神勝禅寺総門

ここ神勝禅寺に関しても、総門はいきなり旧賀陽宮邸からの移築なんですが、中に入って賞心庭の手入れの行き届いた池泉を見ると、心配が期待感に変わっていきました。

神勝寺 松堂

受付のある寺務所の「松堂」は藤森建築、半ばフェイクのような堂塔ではなく、現代には現代のオリジナルで勝負と舵を切ったのかもしれません。惜しむらくはラコリーナ近江八幡にそっくりなこと。同じ藤森建築で時期も近いことから当然といば当然かもしれませんが、ファミレスじゃあるまいしこの土地のこの場所に見合ったオリジナリティ豊かなものにして欲しかったところ。ちなみに、完成はラコリーナよりもこちらの方が先のようです。

神勝寺 洸庭

松堂の脇の階段を上がって、石山寺のものを模した多宝塔の横を通って細い橋を渡ると、アートパビリオンの「洸庭」が見えて来ます。

彫刻家・名和晃平氏とSANDWICHの設計で、その形はでっかいフィナンシェのようだけれど、常石造船になぞらえてか舟を表しているようで、なるほどそんなディテールが見て取れます。表面の杮葺きは非常に緻密な仕事で、和の落ち着いた雰囲気を併せ持つことに成功しています。

神勝寺 洸庭

そういった意味では藤森建築よりはるかにオリジナリティがあって、意味のある建築かもしれません。ただ、ネタバレのため内容は避けますが、パビリオン内部の見世物はとくに何と言うことはなく、暑い日にちょっと涼む以外はわざわざ入るほどのものでもないように思います。

神勝寺 洸庭

洸庭の奥には中根金作の庭園が。これは洸庭以前からあって、洸庭建設時に変えてしまうか迷った結果、そのまま残したのだとか、全く正解だと思います。

洸庭のあとは茶室などを見ながら本堂のある無明院へと向かいますが、この日は文句なしの快晴で、見上げれば画像のような色合い。

神勝寺

無明院までは結構な距離なんですが、途中苔張り作業をしている方がおられたので、苔の話をしていたところ、結構盛り上がってしまい、日本庭園の話まで色々と楽しませていただきました。てっきり庭師の方と思って話していたのですが、伺ったお名前(苗字)が開基された方と同じで、もしかしたら偉い方(かご親族)だったのかも。これは仮説ですがそのような方が自ら庭仕事をされているのは素敵です。

神勝寺 枯山水

山登りを経てやっと無明院へ、建物はコンクリートですが、目の前には広大な枯山水庭園が広がり、高台だけに眺めもなかなかのものです。弥勒菩薩像を安置する本堂前はまたちょっと雰囲気が違って下の画像のような感じ。

神勝寺 枯山水

広い方のちょっと無機質な石と違ってこちらは表情があるように見えます。

また、無明院内の荘厳堂と呼ばれるミュージアムでは、白隠禅師の書画を展示、ゆったりとしたスペースで鑑賞でき、ちょっとトクした気分になれます。

荘厳堂

新勝寺はテーマパーク然としたところがあるものの、結構見所は多くて楽しめました。苔話が長引いて時間が押したこともあり利用しませんでしたが、ここには温泉もあったそうです。残念ながら2019年3月で休止となってしまい、ちょっともったいなかったかも。

神勝寺

敷地が広いだけに維持だけでも大変かと思いますが、様々な建物に豪快な滝石組みと池泉庭園、なかなかレアな眺めかと思います。また苔話でもしに来たいですね。

 

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