ラ コリーナ近江八幡

草屋根鮮やか、ラ コリーナ近江八幡

久々の藤森建築、ラ コリーナ近江八幡を見に行ってきました。

旧秀隣寺庭園のあと、来た道を堅田まで戻ります。居初氏庭園にも立ち寄りたかったものの時間がなく、電車でも行けそうなので、また別の機会に里坊庭園や日吉大社、三井寺などといっしょにまわることにし、琵琶湖大橋を渡って、クルマでないと難しそうな兵主大社へと向かいます。

兵主大社

本殿にお参りをして、「さて、お目当の庭園はどこかいな」と探していると、「庭園拝観は社務所まで」とあります。そこで呼び鈴を押してみたものの、待てど暮らせど応答なし。じつは後でわかったことですが、この時サギのフン被害とかで拝観を中止していたそうです。(9月14日より再開)

兵主大社

仕方がないので柵の隙間から覗き込みますが、肝心の奥の石組みが見えず。確かにかなりの数のサギがいましたが、これなら居初氏庭園か、もしくは早めにラコリーナに行けばよかったかも、ちょっと残念でした。

ラ コリーナ近江八幡

さてラコリーナ、ここは地元の和菓子店「たねや」の新たな拠点として誕生したスポット。藤森照信氏の手による草屋根をはじめとした独特な意匠の建築群が話題を呼んでいて、平日にもかかわらず、駐車場にはかなりの車が停まっています。

草屋根の軒は低く、草部分を広く見せたい意向もあるでしょうが、竪穴式住居や兵庫の箱木千年家などに通じるプロポーションが、建築史家である藤森氏らしいアイデンティティかもしれません。軒下の通路は天井まで塗り回しで、扉の左上に見える手形は「たねや」の社長のものだとか。

ラ コリーナ近江八幡

内部は割合普通ですが、ラコリーナのシンボルを「いつでも人々が集い、にぎわう場でありたい」と、蟻にしたそうで、天井の模様はそのモチーフでしょうか。とするとたねやさんにくる客は甘いものに群がる蟻ってことか(笑

ラ コリーナ近江八幡

休日にはレジて1時間並ぶこともあるそうな。今回は一人ですし、食べてる時間もないのでお菓子はスルー、建物を通り抜けて反対側に出てみます。

ラ コリーナ近江八幡

右手前の草屋根は藤森氏が自ら山に入って選んだという栗の木を100本使ったことから「栗百本」という名がついた飲食スペース。軒はショップよりもさらに低くなっています。

奥の銅屋根の建物はたねや本社で、銅屋根に使われている5500枚もの銅板は、従業員や学生が一枚一枚曲加工をしたものを使っていて、独特の手作り感。
本社前は田んぼになっていて、稲がいい具合に実ってきています。

ラ コリーナ近江八幡

向かいには回廊があり、こちらも草屋根となっています。

藤森氏はもともと建築史家とあって、古い建築への造詣も深く、書かれた書物も楽しくて好きな方ですが、この草屋根に関しては、見た目はとても楽しげで、その点狙い通りの効果を上げていると思う一方で、ちょっと疑問も残ります。

氏は建築のサステナビリティを挙げておられ、たねやさんも自然に対する畏敬の思いを示されていますが、この草屋根は果たしてそれらの回答になっているでしょうか。

この屋根に乗っかっているのは「自然」でしょうか、単なる「植物」あるいは「緑」とどう違っているか、以前のエントリーでも建築家の自然に対する認識について書きましたが、その点でもっと突っ込んで欲しかったと思います。

ラ コリーナ近江八幡

草屋根の軒からはひっきりなしに水が滴っています。例えばこれが深い井戸の自噴によるもので、その水はお菓子にも…となると面白いんですが、自動灌水システム…となると「なぜわざわざ?」「草屋根維持のために?」「それは自然?」とズレを感じてしまいます。

または木造建築の我が国が、脈々と受け継いできた雨じまい技術の集大成のようなものでもあれば違ってくるでしょうが、そもそも自然素材のスキンの中身は鉄筋コンクリートだそうですし、それもなさそう。

自然を意識しているかのようで、結局は表面的になってしまっていることを端的に表しているのが、本社屋根から突き出ている樹齢250年と言われる楠の大木。一見すると以前から生えているものを避けて建設されたかのように思えますが、じつは移植されたそうなんです。

ラ コリーナ近江八幡

また、ところどころに感じられる「日本の有名アニメ」的な雰囲気もあまり好きではないかも。結局は「面白いの作っちゃおうぜ」みたいな何か広告代理店っぽいノリだったのかなと思ってしまいます。確かに面白いんですけど、ちょっと無責任な感じがするんですよね。

「企業なんてそんなもの」と言われればそれまでですが、風光明媚な滋賀に根ざした企業ですから、もう少し未来に通じる新鮮な風を感じてみたかったのが本音。同じお菓子を扱う企業ながら「六花亭」からはそれがもう少し感じられました。

ラ コリーナ近江八幡

建築がスクラップ&ビルドから逃れ、長く使われるようになるために必要なのは「愛されること」と藤森氏は言われています。これにはなるほどと思い、ここも確かにその要素が具現化されているかもしれません。ただ、個人的には同時にある程度「尊敬されること」も必要な気もしています。

ラ コリーナ近江八幡、藤森氏の作品だけにちょっと疑問も書きましたが、この美味しくて楽しい場所が20年、30年後にどうなってくか楽しみです。

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