流氷の旅、盛りだくさんの2日目は朝6時にチェックアウト。
札幌から4時間かけて釧路へ
まずは札幌駅に6時7分に到着する急行はまなすの見物です。外は当然氷点下、それでも随分とこの寒さにも慣れてきました。3番ホームに上がると、列車はすでに到着しており、ここまで乗ってきたと思われる乗客の方の記念撮影会状態でした。
今回は通常編成のようで、最後尾には白帯のスハネフ14が。定期運用中の青い寝台客車を見るのはこれが最後かも…と思うと感慨深いものがあります。十数時間を短く感じるほどゆったりした気持ちで旅ができる列車、そんな列車がいつかまた戻ってきてくれたらと願わずにはいられません。
「はまなす」が回送されていったあと、本州の人間には珍しいラッセル車が入ってきました。ゴツくて頼もしい出で立ちですが、真ん中には富良野・美瑛ノロッコ号用のDE15 1534が挟まっています。流氷ノロッコが廃止になるのもこの手の機関車が足りなくなるということなんですね。
さて、今回乗車する7時2分発のスーパーおおぞら1号は釧路まで約4時間、車内販売がないため、弁当はあらかじめ確保しておかないといけません。札幌駅の弁当屋の中でも、7、8番ホーム下の弁菜亭はおおぞら号の客向けか、朝は6時から開いています。
問題は目的地の釧路での乗り換え時間がわずか8分なこと。この時期雪で遅れることも多いのですが、この日幸い晴天で風もなく、鹿さえ飛び出さなければ大丈夫そう。
発車してすぐ朝食です。H.I.S.の予定表では、全日空ホテルは朝食付きになっていたけれど、そもそも朝食は6時半から、これで7時過ぎに出る特急に乗るのは無理があるんじゃないかと思っていたところ、フロントで朝食BOXという名のサンドイッチを渡してくれることになっていました。でもこれはイレギュラーな対応っぽいですが、それでもそこは全日空、美味しいサンドイッチでした。
4時間の車中、自分たちには見慣れない雪景色も見どころの一つなんですが、車内は予想外に暖かく、揺られているとどうにも寝てしまい、気づくともう帯広。お弁当をいただきます。
これはもう大正時代からのロングセラーという「石狩鮭めし」(1000円)。北海道の列車旅は駅弁も大きな楽しみです。
厚内を過ぎて海が見え始めるとまもなく釧路、初めての街で、ぜひ降りて厚岸の牡蠣でも頬張りたい気分ですが、隣のホームにはSL冬の湿原号がすでにスタンバッています。
SL冬の湿原号は、釧網本線の釧路から標茶まで白銀の釧路湿原の中を行く季節観光列車、ホームの人だかりから人気の高さが伺えますが、2両あてがわれていたSLも1両となり、これもいつどうなるかは分かりません。
SL冬の湿原号に乗車
牽引機のC11は大井川鉄道や真岡鐵道のほか、来年には東武鉄道にも貸し出される予定で、各地でその姿が見られますが、やはりSL、形、音、匂いと気分が高まります。
これまでSL列車を見たことはありましたが、SLの牽引する列車に乗ったことはなく、まさに初体験です。
牽引される客車5両のうち4両はレトロ風に茶色く塗られた14系特急型客車ですが、残りのスハシ44 1は、1952年に作られた旧型客車で正真正銘のレトロ車両、H.I.S.で用意された指定席がラッキーなことにこの車両で、1940年製の機関車とのレトロコンビを味わえました。旧型客車は常磐線で最後に走っていた1981〜2年頃から35年振りくらいでしょうか。
14系に比べれば相当狭いものの、意外に乗り心地は良く、旧客らしい高くて丸い天井がグッド。この車両はスハシの「シ」が表すとおり、カフェ・カーとなっており、アイスと釧路のイオマンテというレストランの作っている「SL冬の湿原号プリン」を買ってきました。外は氷点下ですが、設置されただるまストーブのおかげか車内はかなり暖かく、スイーツもまた格別の美味しさです。
景色はというと、雪のために湿原っぽさは少ないかもしれないのですが、野生の動物たちが見られるのは実に楽しいものです。
オジロワシはカメラに捉えられなかったけど、エゾ鹿の群れはバッチリ。油断すると煙が写り込んでしまうのはSLならではですね。
茅沼駅では、日本で最も大きな鳥で、SLのヘッドマークにもなっているタンチョウの美しい姿もみられました。白鳥も共演です。
釧路から約1時間半で標茶駅に到着、あっという間のSL列車体験でした。
ここでも次に乗るツインクルバスまではたった13分。もうちょっとユックリ記念撮影する時間があってもよさそうに思うんですが、これはあとで納得します。ただ、札幌駅で朝に弁当を買い損ねていたら、それはそれはひもじいツアーになっていたんじゃないかと身震いします。
上の画像は標茶にたたずむSL冬の湿原号。客車2両目がスハシで、他の車両と断面形状が違っているのがわかります。
スハシ44アップ。とても貴重な車両ですが、状況の厳しいJR北海道のこと、いつ廃車されてしまうかわかりませんので、シッカリ撮っておかないと。
ツインクルバスで世界遺産知床へ
標茶駅から知床まではツインクルバスを利用します。ツインクルバスとは、JR北海道が運営する鉄道利用者向けの予約制観光ルートバスで、ガイドさんもついており、今回のルートの場合は途中トイレ休憩も兼ねて摩周湖と、硫黄山、そしてオシンコシンの滝に立ち寄ってくれます。
SL冬の湿原号と流氷ノロッコを結んだ周遊ルートがすでにパッケージとして扱われているようで、H.I.S.のツアーは、それに飛行機と宿をつけたものと言えます。
途中摩周湖に向かうべく、山を上がっていくにつれ雪がひどくなり、展望台からの眺めは画像(左)のような有様。でも霧のない摩周湖は新婚旅行の時に見られたし、逆の季節の眺めがまた楽しくもあり、懐かしくもあります。
途中川湯温泉でここでの宿泊客を下ろし、バスはいよいよ知床半島へ。そうこうしているうちにバスの行く手に突如現れたこの景色、りゅ、流氷です!
北から流れてきた流氷は知床半島で溜まるんですね。本格的に見られるのは明日以降と思い込んでいたので大感激、テンションも急上昇です。
暖かかった今年、流氷の初接岸が観測されたのはわずか4日前の22日、観測史上最も遅い記録なんだそうです。(来なかった年は除く)しかもその後一旦退いて、このような状態になったのは前日のことなんだそうで、バスガイドさんは「ラッキー」を連呼していました。
車窓に広がる「氷の世界」。日が落ち始めて色づいてきているのもまたドラマチックです。と、興奮している間にオシンコシンの滝に到着。
ここも20年振り。ただでさえ清々しい空気の漂う滝が、雪景色でより一層清らかさが増すような気がします。雪が音を吸収してくれるのか、穏やかな音もまたその理由でしょうか。
オシンコシンの滝を出るとほどなく宿泊するお宿、知床第一ホテルに到着します。20年前は知床には泊まらなかったので、知床の夜は初、自慢の温泉にもユックリ浸かりたいものです。
が、その前に「荷物は自分らで持って行きますから」と急いでチェックインしたのにはワケがありました。ちょうど夕暮れ時、文字通り流氷の夕景を目に焼き付けるためです。画像は部屋からの眺めですが、乗り換え時間を長めにとっていたら、これは見られなかったかもしれません。最高の眺めでした。
夕食は少し早めの6時から豪華なバイキングで済ませましたが、お風呂に浸かる前に、オーロラファンタジーにでかけます。これは知床でむかしオーロラが観測されたことをもとに、地元の方が協力して開催するオーロラをイメージした光と映像のショーです。「知床を訪れた方に楽しんでいただきたい」という思いの伝わる素晴らしいイベントですが、残念ながら30周年の今年で最後なんだそうです。
残念ではありますが、ショーの後には温かいココアが振舞われたりして、いい思い出になりました。
盛りだくさんの2日目、広々とした温泉は思いの外空いていて自分の他には4名ほど、ユックリ疲れを落としせました。
この知床第一ホテルは便利なことがひとつあって、1階のお土産売り場では指定の昆布2種と知床ラーメン(各1000円)の計3種類から3つをお好みで選ぶと、送料が基本無料になります。(箱代は別)
なので、この最低条件を満たせば、あとは箱スペースの許す限り他のお土産品や、使い終わった衣類などを入れて送ることもできちゃうわけです。
今回のような移動ばかりの旅はずっと荷物を持っていなければならず、しかも足元はなれない雪道、こういった配慮は実にありがたいものです。
発送をお願いして、部屋に戻るともう電池切れ、あっという間に寝コケました。