金閣寺

金閣の創建時に想いを馳せる

鏡湖池につづいて、庭のシンボルである金閣(舎利殿)もじっくり観察です。
この金閣は、現在三層宝形造で杮葺、一層は法水院と呼ばれ、蔀戸を備えた寝殿造、二層は潮音洞と呼ばれ、明障子や遣戸を備えた書院造、そして三層は究竟頂(くっきょうちょう)と呼ばれ、花頭窓や桟唐戸を備えた禅宗様の仏間…という三様折衷の相当に独特なものです。

北側から眺めると、上の画像のような感じになってます。鏡湖池側を正面とすると桁行は5間…のはずなんですが、こうして北側から見ると変則6間のように見え、しかも一番手前の1間の幅を基準とすると、1つ奥の2番目の間の幅は同じですが、3番目の間は少し狭く、4番目、5番目もっと狭い。そして6番目は3番目と同じになっていて、極端に幅の狭い4番目と5番目部分を合わせて1間にすると、今度はそこが一番広くなってしまって変則的であることには変わりがなく、これは一体なんだろう?となるわけです。

ここで金閣について少し紐解いてみると、1408年の足利義満の死後、敷地内に点在していた堂舎のほとんどは移築や1467~77年の応仁の乱で姿を消し、かろうじて金閣のみが当初からの遺構として残っていたものの、1950(昭和25)年にナント放火によって全焼、現在のものは明治時代の1904~6年の解体修理時に作成された図面や写真・古文書・焼損材などを元に、1955年に再建したものだそうです。

この「昭和の再建」というのがミソでして、これだけの知名度があり、世界遺産に登録されながらも「国宝」ではないんですね。焼失を機に解除されてしまったわけです。なので、金閣について調べようにも意外と資料が少ないんですが、どうやら金閣の北側には当初天鏡閣と呼ばれる会所として利用した建築物が存在しており、それと金閣の間が2層式の空中廊下で結ばれていたそうです。

つまりあの狭い2間部分は、この空中廊下が接続されていた遺構…ととれるかも知れないんですが、「日本建築の美」というウェブサイトでは、さらに意外な説があることが分かりました。

このサイトで紹介されていた、宮上茂隆氏の説では、

  • 現在は二層、三層とも内外に金箔が張られているが、二層は以前、高欄を除いて内外とも黒漆塗りであった。
  • 創建金閣の復原図における外観は、端正な左右対称ではなく、三層の中心が西側へずれており、二層屋根の東部は入母屋屋根になっていた。
  • 金閣東側に池から金閣へアクセスするための舟入の玄関が附属していた。
  • 金閣の北側にあった二層会所の天鏡閣と複道(二層廊下)によって繋げられ、また金閣より東方、今の書院や方丈がある辺りにあったと思われる表向きの御殿の寝殿から金閣へ透渡殿が伸びていた。

とされています。

これらの根拠までは示されていないので、信憑性のほどは分からないのですが、一緒に掲載されている図を見る限り、現在のものとはかなり趣を異にしているのが驚きです。ただ、この説を元にもう一度金閣を眺めてみると、2層目の、とくに桁行き方向の屋根傾斜が浅すぎることに気づきます。二層の大きさに比べて三層部分が小さすぎるためなんですが、これでは相当雨じまいが悪いはずです。これが宮上説どおり三層が西側にオフセットされていたのであれば、ある程度の解決はできると思いますし、なるほどこれなら変則的な間の構成も理解できます。

金閣寺

ただ、オフセットされていた三層を、なぜ中心へ移動させて入母屋屋根を廃したのか理由がわかりません。もしかしたら応仁の乱で致命的な被害こそ受けなかったものの、三層部分に損傷を受け、修理時に現在のようになったか、あるいは建築時に宮上氏の説通りに建設を進めていたものの、なんらかの理由で途中から現在の形に変更されたのかも知れないですね。

ほかに宮上説で興味深かったのが1番目の「二層は黒漆塗りだった」というもの。実際に昭和の再建築時に、もともと三層のみ金泊を押す予定だったものが、途中、二層隅木の先端部分の古材から金箔の痕跡が発見されたとかで、天井と床を除く二層全体にも金箔を押すように変更になったそうです。

義満は権力を誇示したかったのだから二層も金ピカにしたはず…というのはちょっと秀吉的な発想のように感じるので、痕跡の信憑性を置いておけば、義満はもっと風流人だったと思われるので、二層は黒漆で仕上げて、金色の三層が浮かび上がるような演出を目論んだとしても不思議ではないような気がします。

歴史的建造物と言うのは、色々な背景があってホントに興味がつきませんね。

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金閣の創建時に想いを馳せる」への2件のフィードバック

  1. 京都に雪が降降ったニュースを見る度に行ってみたい金閣寺
    結局行けないんだよなぁ~(笑

  2. 雪の金閣はもはや世界的定番ですね。
    自分も見てみたいですが、雪が積もってしかも快晴の時に行く…なんてのはなかなか地元でないと難しいですね。

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