夏の三渓園

夏の三渓園

16日は横浜の三渓園に行ってきました。
むかーし中学生の頃に塾の友人と行った記憶があるんですが、それ以来の無沙汰でした。
今回は横浜の開港150周年記念企画として「古建築全17棟の一挙公開」がありまして、それをお目当てに行ったんですが、なんでも全棟公開は三渓園史上初なんだそうです。同時に夜のライトアップも開催だったんですが、そんなに長時間はいられないし、夜は建築自体の写真もうまく撮れないので、朝一で入園しました。

夏の三渓園

三渓園は、入園するとあまりの自然環境にそこが本牧のショッピングセンターと湾岸の工業地帯に挟まれた場所にある事をスッカリ忘れてしまいますね。まあ、言ってみればお金持ちの名建築寄せ集め道楽公園というわけですが、なかなか良いところもあります。

まず、全17棟のうち、9棟は貸出をしているんですね。公式ウェブに寄れば「茶会、句会などの文化的催事、撮影などにご利用いただけるよう、貸出しております。鶴翔閣では、文化的催事以外のご利用、会食、懇親会など、また、迎賓、コンベンションプログラムの会議・パーティ会場にもご利用いただけます。」とのこと。重要と言っても建築はやっぱり使うもの、こうして実際に「使える」のはとても良い事だと思います。
また、合掌造りの旧矢箆原家住宅(ヤノハラケ)では、実際に囲炉裡に火が入れられていましたが、演出的要素のほかに燻すことによって、その茅葺屋根を守っているんでしょう。古い建築は生活の営みがあって初めて説得力を持つ部分も大きいですね。

夏の三渓園

さて、非常に広い園内ですが、やっぱり見所は聴秋閣と、東の桂離宮とも言われている臨春閣の2棟、とくに臨春閣は内部に永徳や探幽を始めとした数々の狩野派による襖絵が見られ、これがまた美術館と違ってガラス越しなどではなく、本来の襖絵のあるべき姿で見られるのが素晴らしい。確かにこのままでは保存上あまり良いとは言えず、建仁寺のようにレプリカを置く方が良いのかも知れませんが、作品たちにとってはきっとこの形が一番幸せでしょう。

夏の三渓園

雁行状の配置と、水面に浮かぶ軽快さが桂離宮を思わせますが、こういった雰囲気は現代の建築にも通じるところがありますね。ただ、そのほとんどは現代建築ゆえといいましょうか平屋根です。連なる屋根をこれだけクールで優美に見せられるのは、傾斜のついた三角屋根のなせる技で、その角度と杮葺の素材感のコラボが大きくモノを言っているように思えます。厳島神社の桧皮葺にもそんな優美さがありました。ここを見ていると、なんだか桂離宮に行ってみたくなります。

夏の三渓園

というわけで素敵な三渓園ですが、ちょっと残念な点もあります。一部に保存状態がかなりよろしくないものがあって、修復されていても、その修復が雑なものが見受けられる事です。とくに寺院建築系はなかなか難しい状況ですね。これが通常のものなら仕方ないんですが、わざわざ移築しておいて…という感は拭えません。寺院建築を見るならよそへ行った方が良さそうです。

暑いながらも良い風が吹いていた三渓園ですが、クルマに乗って市街に移動するととたんに暑くなります。都市のもつ熱なんですね、三渓園とは3度くらい違うんじゃないでしょうか。勝手に暑くなるような環境を作っておきながら、エアコンで調節…まったく愚かな話ですが、そんなことにも気づかせてくれるような場所でした。

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