いよいよ世界最古の木造建築群、法隆寺にやってきました。
なんでしょうね、お寺にこのワクワク感は。何度となく本に載ってる写真を眺めて憧れてきた場所にやっと来ることができたという気持がそう思い起こさせるんでしょうか?やはり法隆寺はお寺の中でも別格のものがあります。
飛鳥時代のお寺が、多くの修理や改築があったにせよ、約1400年もの間幾多の天災や戦火をくぐり抜け、こうして伽藍ごとしっかり残っている…、この事実だけでも法隆寺のご利益たるや相当なものだと思ってしまいます。
それに、法隆寺は個々の堂塔もさることながら、南大門をくぐったその時から広がる、土塀に囲まれた風景も素晴らしい。もう何百年もこの風景は変わっていないんでしょうか?四半世紀前に中門前で修学旅行の集合写真を撮りましたが、少なくともこの間は何も変わっていないようです。
取りあえずこの日は時間もないので早速西院伽藍へ入りますが、この高い緊張感を持った伽藍構成美は素晴らしい。もちろん個々の堂塔もいいのですが、シンメトリ構成が多い宮殿や寺院の中にあって、五重塔と金堂という高さも幅も違うものをこうしてまとめている…、それも飛鳥の時代に。実は回廊にしても中門を挟んで金堂側の方が五重塔側よりも1間長くしてあるなどの工夫がしてあります。
直線基調のイメージが強い和建築ですが、回廊に立つと胴張りのある柱に、ゆるやかなアーチを持つ虹梁が、とても優しく効果的なことに気づきます。隣に見える堂塔の屋根の反りとも相まって、これらの古建築からは繊細な曲線の活用が感じられますね。
そして五重塔、力強さと動きを兼ね備えたその姿に感動します。その時代ゆえの一軒屋根がまた良い特徴になっているようで、この塔は全体で見ても部分的に切り取って見ても見事です。でも、金堂もそうですが、やっぱり裳階はちょっと余計ですねぇ。五重塔なら西岡棟梁の造った模型でスッキリした姿が見ることができます。
法隆寺の伽藍見学には西岡棟梁の本「木に学べ」を片手に回ると、通常では分からないような発見があってとても面白いです。西岡棟梁も法隆寺を通して本当の文化と言うものを知ってもらいたいと仰っていました。本自体の内容もとても素晴らしいものなので、是非おすすめです。
さて、五重塔と金堂の後に位置する講堂ですが、その姿を見て唖然!なんと屋根の葺き替え修理中でした。せっかく来たのにこんなお姿とは…と最初嘆いてしまいましたが、修理中ゆえにとても良いことがありました。瓦の寄進を受け付けていたんです。自分の名前を書いた瓦が法隆寺講堂の屋根に乗る…、しかもその瓦は聞けば山本清一先生の山本瓦工業のものだと言うから悶絶ものです。ちゃんと葺いた時に屋根の端にくるようにちょっと高いんですが軒丸瓦にしました。あと、寄進した人にはもれなく憲法十七条の一条と二条の部分の版木印刷を頂けるんですが、これもまたじつにありがたい、帰宅後早速額に入れて飾りました。
法隆寺見物は元々3日目の午前中を予定していましたが、雨の予報がなかったとしても、とてもその時間では回りきれませんでしたね。初日に来られて良かったです。5時にもなるとさすがに日が落ちて寒くなってきましたので、3日目を楽しみにしつつ、法隆寺をあとにしました。