先生方の評価

自動車雑誌などで先生方の書く評価記事を読んでいて、しばしば「売れているだけあっていいクルマだ」などという論調に出くわすことがある。

今回もフィットの記事で目にしたのだが、よくこんな自らの職業を放棄するようなコメントを書けるもんだと呆れてしまう。販売実績を見て評価を下すなどというのは小生でも出来る。きっと「多くのユーザーに認めてもらえるだけの価値を創造したというのが偉い」などと言いたいのだろうが、自動車評論家というのはいつから売れる売れないの判断をするための職種になったんだろうか。
せっかくいろいろなメーカーの色々なクルマに乗って多くの経験を積んでいるのだから、販売実績に関わらずよくできたクルマを見極めて、分かりやすく一般消費者に解説してくれるのが本来の姿なのではないのだろうか。
そもそも一般大衆ほど当てにならないものはない。音楽だってそうだ。あんなに売れたコムロミュージックはそんなにいいものなのか?決して悪いとは言わない。ある程度のレベルは持っていると思うが、後世に残るべきものではない。もっと分かりやすく言えば、ナツメロを聴いてみよう。そうすると、同じトップに輝いた楽曲でも、今にしてみればまったくもってつまらないものと、今なお輝き続けるものとがあることに気づくだろう。売り上げなんて言うものはそんなものなのだ。ユーザーの求める要素を把握する事は大切だが、「売れてるから把握されてる」では順序が逆だ。
ましてや自動車など、要素が多過ぎて一般の人にはなかなか分かりづらい。そんなときに本当に価値あるものを挙げることで、まっとうなものがまっとうに売れるような世の中に近づけ、クルマを取り巻く環境をもっと柔軟なものにしたほうが、先生方にとってもいいはずなのではないのだろうか。

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先生方の評価」への4件のフィードバック

  1. お気持ちはよぉ~っく分かります。
    あーいう人たちはとかくジャーナリストだの報道だのと僭称しますが、嘘を言うな。あんたらのどこがジャーナルで報道で評論だと吐き捨てたくなることしきりです。
     僕はもう、あれらは社外宣伝部員だと解釈してます。外注の広告スタッフ。ま、そうは言ってもPRを商品として提供するのならもうちょっと智恵を絞って内容を洗練させろと言いたくなったりもしますが。
     何年か前、1960年後半~80年頃に新聞社が刊行した自動車年鑑誌を手に入れましたが、あれは本当にジャーナルでした。啓蒙、と言う表現は好きではありませんが、きちんと社会的な視点をも軸に据えた評価・分析・提言を示し、大変に硬派な原稿が掲載されていたものです。
     思うに、工業製品としてのレベルが全体的に上がって最早「間違いだらけの自動車」などと言うものが事実上なくなり、また消費市場も豊かになってクルマと言うやつが耐久消費財から嗜好品の方面にその存在意義をシフトして行った中で、硬派でジャーナリスティックな記事は役割を終えていったのかも知れません。
    少なくとも、ハードウェアやインフラストラクチャに関わる点では。
     それではソフトウェア的側面(どういう車にしたいのかと言う製造側の商品哲学や、ユーザー側がクルマと言うハードウェアをどういう具合に生活の中に位置付けていくのかなど)はどうなのかと言うと…これは恐らくジャーナルの視点ではなく、文芸評論系の言論が扱うべきカテゴリになるのでしょう。
     そして、その部分に関しては、見るも無惨な「かんそうぶん」が相変わらずジャーナル面をして幅を利かせている、といった状況なんじゃないかなと思います。

  2. 堕民さん>>
    社外宣伝部員ですか、そうかも知れないですね。M澤さんが現役を退いて、この世界にはいる時に「ジャーナリズムなんてものはほとんどないよ」と言われたんだそうです。あと、一般誌への寄稿の方がいわゆる自動車専門誌よりも報酬が全然いいらしいんですけど、なんだか自動車ジャーナリズムの世界ってとても寂しいものに思えてきます。

  3. 一般誌の稿料のほうがいいのは納得の行く話ですね。
    やはり部数が全然違いますし。
    以前、DCJだったかなあ。どっかの広報の方とお話をしたときに、広報車両の貸し出しを始めとする各種媒体への便宜供与には厳然たる優先順位があって、1がテレビ、2が一般誌、3が自動車専門誌で一番下がウェブ媒体だと聞きました。
    どれだけ多くの、特に興味を持って情報を集めようとしていない層に多くの情報を到達させるかの効率を考えれば、なるほど妥当な順位付けではあります。
    それはともかく、今の自動車専門誌などがメーカーからの広告出稿で収入を支え、紙面づくりを広報車両の貸し出しや広報発表資料に依存している以上、ジャーナリズムなんて始めっから成り立ち得ない構造になっていると考えるべきなのでしょう。
    そして今、出版の世界はカテゴリを問わず低迷しています。こと自動車雑誌に限ってみれば、業界標準を大きく下回って苦しんでいる状況にあるとも聞きます。
    なれば、尚更メーカーの以降には逆らえず、より一層ジャーナリズムから離れ提灯持ちや幇間に転じていくのは必然かも知れません。

  4. 堕民さん>>
    いかにフツーのユーザーを取り込むことでシェアをキープしているかというトヨタの現状をみると、もはや3番の自動車専門誌よりもよっぽどWeb媒体(あくまで無料のサイト)のほうが宣伝効果ありそうに思うんですけどねー。それでもWebが冷遇されるのはネット犯罪に起因する若干のダーティーなイメージがある事と、誰でも作れるために線引きがめんどくさい(難しいではなく)からなんでしょうね。

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