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モンデオST220に乗って 前編

フォード・モンデオST220は、個人的にかなりツボにハマった車だった。

フィエスタSTを購入してから、車種によっては借りている日数に余裕があっても、あまりのつまらなさに、途中から乗る気にもならないものも多かったのだが、モンデオST220はまさに返却が惜しく、前日の夜中まで合計800キロ近くも乗り回したクルマだった。
今回の試乗車は”先生方”が散々振り回しただけでなく、各ディーラーに試乗車として全国行脚していたもので、既に約7000km弱を走行している。
動き出してまず驚くのはその乗り心地だ。とても18インチの40扁平タイヤを履いているとは思えないほど、スローペースでもハイペースでもしなやかなこの足回りは絶品と言っていいだろう。雑誌の評価などで「決して硬くはない」というニュアンスのものが見受けられるが、それはまだ新車時の硬さが残っていたためではないだろうか。非常にフラット&スムーズで電車かと思うほど滑るように走って行く。

そして次に驚くのがエンジン。失礼ながらフォードのエンジンがかほどにスイートなものであるとは全く予想していなかった。確かにカタログを読むとかなり手を入れられているようで、インテークマニホールドの大型化や内部の平滑化、クランクシャフト、カムシャフトなどの軽量化、ピストンやコネクティング・ロッドのバランス取りなどがなされていると言う。
色気ではアルファの3.2リッターエンジンに譲るものの、シルキーなフィーリングのうえに音質も優れ、このエンジンがモンデオSTのキャラクターをおおいに引き上げていると言えるだろう。特性としては余裕のある排気量を利用して、実質2つのモードで走る事が出来る。と言うのは、昨今のエンジンに多いフラットトルク型ではなく、2400回転あたりで一旦トルクカーブが落ち着き、4100回転から5000回転までまた一気に上昇する特性を持っているのだ。それにしてもこの素晴らしいエンジンを純粋なマニュアルで味わい尽くせること自体、今では希少な事だ。
ステアリングや各ペダルなど、操作系は全体に軽めに作られているが、しっかり感はある。最近の国産車のステアリングの軽さには辟易としていたのだが、モンデオに乗って軽い事そのものが悪いのではなく、単に熟成されていないだけで、軽くても安心感があって正確で楽しい操作感が実現できる事が良くわかった。
実際のところ、1.5トンもの車重はそれなりに感じる。しかしフォードはあえてそれを感じさせまいとはしていないようだ。ピンポイント的に速さを追求すると言うよりも、あくまでシャシーの能力の範囲内で、V6エンジンの特性や、乗り心地、ハンドリングの味付けなどを総合的にバランスさせながらの昇華を試みているように感じる。アクセル、ブレーキ、ステアリングとすべての操作の入力に対する姿勢や挙動の変化が、それぞれ密接にシンクロしていて、しかも非常にナチュラルなフィーリングに仕上がっているので、とてもリズミカルな運転が可能。例えばブレーキはそれ単体だけで見れば、もう少しソリッドで、効きも強力にしたいともとれるのだが、仮にそこだけを改良すると、走りのリズムさえ狂ってしまうのではないかと思えるほど全体のマネジメントがなされている。モンデオST220に乗ると、コーナリングラインはもちろん、加減速やGフォースの曲線までも美しくコントロールして走りたいと思わせられ、またそうする事がとても楽しく感じられてくる。まったく神経を使わずにペースを上げられるし全然疲れないのに楽しいという一種別世界の観があるのだ。

欠点も確かになくはない。先述のブレーキも雑誌などでよく指摘されるところだし、モンデオのベース車自体2000年のデビューとあって、ボディ剛性が昨今のクルマと比べれば多少劣り、ボデイ剛性と密接な結びつきのあるサスペンションの動きにも古さを感じる事もある。しかしモンデオST220の魅力は決してそのようなところにあるのではなく、もっともっと普遍的なところにあるのだ。
つづく。

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モンデオST220に乗って 前編」への11件のフィードバック

  1. お疲れ様です!
    モンデオST試乗レポを読ませて頂くとかなりのバランスの良いクルマだと推測できます。
    私もSTを試乗したいと常々ディーラーにて確認しているのですがなかなか見つかりません(笑)

  2. しょっぱーずさん>>
    モンデオの場合にはモデル末期でもありますし、なかなか難しいかもしれませんね。フォーカスはですね、ここだけの話全損にされちゃったそうです。困った事ですね。

  3. Kahanさんが撮影すると小学校が背景なんて、とても見えませんね(最初の写真)。
    NA、4ドア好きの私としてはモンデオSTが、STシリーズ3台のうちもっとも好きです。もう少しで、間違って買うところでしたが、台数の少なさと、基本モデルの古さなどでメンテナンスに不安を感じ理性が止めました。
    CGTVでも松任谷さんがべた褒めしていましたね。2006の黒には、まだ未練が残っています。

  4. STに恋するMどの>>
    おお、小学校がバレバレでしたかー。
    そうですね、フォードはリセールがアレなので、試しに買うのは難しいですね。でも年を追うごとにコストダウンをする国産と違って、熟成にこだわる欧州車ですから、それがSTの価値観とシンクロしてモデル末期でもそれゆえの良さはあると思いますよ。

  5. 初めまして~
    同県人でディーラーが同じようなので、たまに覗いてまして(^_^;)
    今日、ディーラーでお見かけしましたよね?
    >フォーカスはですね、ここだけの話全損にされちゃったそうです。
     これって、女房のST170の事かな?

  6. ま、まきのり様>>
    こ、これはホントに恐縮です…。というかお恥ずかしい(笑)
    フィエスタSTに試乗されてた方ですか?
    全損のフォーカスSTというのはですね、現行の広報車両が、とある雑誌社の取材時にクラッシュされて全損になっちゃったって言う話のことなんですよー。
    今後ともどうぞ宜しくお願いします。

  7. >フィエスタSTに試乗されてた方ですか?
     
     そうです。夫婦で乗ってました(^_^;)
    広報車両の事でしたか(笑)
    時期が重なっていたので勘違いしてしまいましたm(__)m
    カミさんのST170は、10年乗ろうと車検を通したばかりなのに、昨年末に貰い事故で全損扱いになってしまいました。
    実は今日カミさんは、FiestaSTを仮契約してました(^_^;)
    近いのでお会いできたら嬉しいです。

  8. まきのりどの>>
    おお!仮契約素晴らしいです。今日の試乗はさきほどアップしました。先日中古が売れたと言う事なので、ここのディーラーでは4台目のフィエスタSTになるでしょうか?
    納車の時にもお祝いに駆けつけるとか…お会いできる機会を探しましょう。
    それにしてももらい事故とはやるせないですね。お怪我はなかったのでしょうか?フォーカスST170にはストイックさでは譲りますが、フィエスタもきっと楽しめると思いますよ。

  9. 納車されたら4台目になるんですね!
    納車の日取りが決まったら、ココにカキコしますね(^_^;)
    この先7年の付き合いを決めたばかりの貰い事故だから、全てが納得行かないようです・・・
    フィエスタも、かなりストイックに感じましたよ。

  10. まきのりさま>>
    了解しました。お待ちしております。都合が付けば馳せ参じます。
    積極的なアピール部分ではないんですが、フィエスタSTの美点は小さくて軽い事ですね。取り回しやすい精神的余裕が楽しさに与える影響は思いのほか大きいようです。

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