Waltz for Debby 50年

Bill Evans TrioのVillage Vanguardでの歴史的ライヴからちょうど半世紀となります。

Waltz for Debby

1961年6月25日にニューヨークのVillage Vanguardで行なわれたライヴは、その比類なき演奏内容からも、わずか11日後にScott LaFaroが事故死してしまった悲劇的事実からも、伝説のものとなりました。そしてそのアルバムは屈指の高音質としても知られています。ジャケットデザインもいいですし、何を隠そう弥七のナンバーは、このレコードの品番RLP-9399からとったものだったんですね。

さて、もう10月にもなって50周年とは何を今さら…という感じもなくはないですが、このところバタバタしていて「記念日は聴きまくるぞっ」と思っていたにもかかわらず、すっかりやりすごしてしまいました。でも、実際に発売された日は詳しく知りませんが、だいたい今頃かもう少しあとでしょうか?それにしても、ジャズの黄金時代から考えるとわりと後期にあたるこのアルバムも、ついに50年選手、時の経つのは早いものです。

この50周年に合わせて企画されたCDもいくつかあったようですが、驚いたのは24bit / 192khzのハイレゾリューション音源が出されたことです。HDtracksで$29.98のところ、いまスペシャルプライスとして$26.98(約2100円)で購入できます。(日本からの購入にはPaypalアカウントが必要です)
「50年前の音源にハイレゾと言ってもねぇ」と最初は気にも留めていなかったものの、どうも評判が良いらしい…と言うわけでダウンロード(10曲で2.4GB!)。自分の環境ではこのハイレゾスペックをフルに再生することはできないため、試用中のAudirvana Plusを使って24bit / 48khzにスペックダウンして聴いてみたにもかかわらず、その仕上がりには相当驚かされました。とてもとても50年前の録音とは思えません。

現在CD音源として持っているのは「コンプリート・リバーサイドボックス」やXRCDなど3種類ですが、これらと比較してはるかに見通しがよく、音の密度、精度、粒立ちのどれもが格段に向上しています。ただ、ここまで違っている理由はハイレゾだからというだけではなく、今回あらためてオリジナルのマスターテープからトランスファーされたことも大きく影響しているはず。それでも50年経過したオリジナルマスターは相当劣化しているものと認識していただけに、驚きも倍増です。ちなみに今後通常市販されるCDのマスター音源もこれに切り替えられるとか。

じゃ、オリジナルLPと比べてどうか。残念ながらWaltz for Debbyのステレオ盤のオリジナルは持っておらず、「偏心してる」「ノイズが多い」と言われるRS品番のセカンドプレスでの比較となりますが、自分なりの結論から言うと「若干ながらLP優勢…かな?」でした。LPの方がこまかな難がポツポツあるものの、エヴァンスのピアノがよく聴こえ、その音色も多少色気があり、ピアノと言う楽器の大きさや素材をなんとなく感じさせる質感なんですが、ハイレゾの方はマスターから忠実にデータを拾い上げた素の状態といった趣で、情報量は相当なものですが必要以上の抑揚を感じません。なので、もしかするとハイレゾデータに改めてエンジニアが色づけすればオリジナルのようになるかも知れませんが、Kenwood KP1100+V15 Type4というきわめてフツーな再生環境を考えると、RLP-9399品番のオリジナルは相当なポテンシャルを秘めていると言えます。

いつも写真との比較でアレですが、例えば街の風景を写した写真作品では、そこに写っている細かなディテールがハッキリ分かれば分かるるほどいい作品…と言うわけではないはずで、それが最重要なのは「作品」ではなく「記録写真」です。音楽は「作品」なので撮影者同様、演奏者の意図がより重要だと思うわけです。ただ、このような理屈だけで語れないのもまた事実で、Waltz for Debbyはライヴ録音のため、記録録音のような状態で出されても「当時を追体験できる」ような楽しみ方ができてしまうんです。これは、あの日の録音を時間軸そのままで収録した「Complete Village Vanguard Recordings 1961」という3枚組みアルバムを聴いたときに感じました。観客の話し声や食器の音などが臨場感を盛り上げてくれるので、ハイレゾ音源の誇る情報量は大きな力となります。そういう意味では、このハイレゾ音源は自分のようにスペックダウンして聴くこともできますし、 アナログのようにオリジナルや再生装置に大枚はたくこともないので、かなりオススメです。

また、今回使った有料版Audirvanaですが、かなりいいです。Waltz for Debbyだけで言えばその音質は個人的にFideliaより好みかも。ただ$49はちょっとばかしお高いかな?試用期間の15日間たっぷりつかってどうするか考えます。

Audirvana Plus

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