ここでまた、あの「バイロイトの第九」をご紹介するとは思ってもいませんでした。小生もこれで同じ演奏を4枚も買った事になる。
隠してもしょうがない事だが、小生は玉学の出身である。よく「お金はあるが脳はない」と揶揄される同校だが、なかなか個性的なところであることは衆目一致するところ。小生がここに通って一番ためになった事も「第九を唄えるようになったこと」と思っている。
今回購入したバイロイトの第九はなんと、レコード起こし盤なのだ。ある方が新品同然のLPを所有していて、そこからダイレクトにCDカッティングしたものだ。一般的に考えると、使用機械こそ一般個人では買えないようなものなのだろうが、方法自体はフツーのダビングそのものでどこにメリットがあるのかと思うかも知れない。しかしこれがまた驚くほど素晴らしい音となっているのだ。音自体がかなり明晰になっていて、臨場感も数段アップ。いわゆるオリジナル盤のすごさを改めて認識した。
思い出せば先日、友人が買ったというヘレン・メリルの復刻盤。オリジナルマスターテープから最新のマスタリングを施したものだったにもかかわらず、サードプレスにも遠く及ばないその音質にがっかりしていたものだ。つまり、いかにマスターテープといえども経年劣化の前にはレコード起こしにもかなわなくなってしまうというわけだ。惜しいと言えばレコードの形態上仕方ないのだが、最終楽章のラストの盛り上りが、最も盤の内側に刻まれれてしまうことだろうか。
それにしてもこんな方法でもCDを発売してしまうあたり、第九のもつ魅力、そしてフルトヴェングラーの指揮によるこの演奏がどれだけ世界的に愛されているかを物語る。1951年当時の録音はいかに当時最新といえども絶対的に古く、コーラスなどはかなり不明瞭でもあるのだが、そこは第九を唄えるようになった恩恵が生きており、きちんと聴き取れる。それに音楽の感動は録音状態だけではないのだ。
家宝がまたひとつ増えた事に乾杯しようではないか。(梅酒で)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
交響曲第9番「合唱付」ニ短調 作品125
・ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
・バイロイト祝祭管弦楽団演奏
・ソプラノ:エリザベート・シュワルツコップ
・コントラルト:エリザベート・ヘンゲン
・テノール:ハンス・ホップ
・バス:オットー・エーデルマン
1951年7月29日 バイロイト祝祭劇場における実況録音
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