3日の土曜日は仕事の合間を縫って、新美術館にでかけてみた。
新美術館は2.26事件と関わりの深い旧陸軍歩兵第三連隊の兵舎跡に建てられたもの。ここを最初に見たのはまだ開館前に麻布トンネルを通りながらだった。その個性的なフォルムになかなかいいんじゃないかと思っていた。
今回も入場はトンネル出口から入ったが、この黒川紀章氏の手による建築は、ここから入るのが最も相応しいように思える。いわゆる正門側から見た感じでは、周りの風景とかけ離れているし、乃木坂駅側はちょっと裏口っぽい。
「コレクションをもたない」ことが特徴とされる新美術館だが、それってつまりコンベンションホールなんじゃないの?と思わなくもない。さらに建築のもつ雰囲気じたいも、美術館と言うよりはパビリオンと言った趣で、建築そのものはよく出来ていると思うけど、どうにもしっくりこない。ただ、建物内には無料で誰でも入れて、スペースを共有できることは素晴らしい。
入り口付近には旧陸軍歩兵第三連隊の兵舎の一部が別館として残されており、その手法に表参道ヒルズ(こちらは建て直し)を思い出すが、あまり意味のないその残され方に、「残せ」と言われたから残したけれど、黒川氏が自身のカラーを全面に出したい裏で結構邪魔だったんじゃないだろうかとさえ思わせる。
本館の方はまさに黒川カラー全開で、福井美術館の流れを汲んだ外観と、得意の円錐形の組み合わせだ。内部の逆さ円錐の上がレストランになっているのはなかなか面白いけれど、入り口の円錐はちょっとどうだろう。まさに表参道の日本看護協会ビルとまったく同じ意匠なのだが、全体の流れに合わないし、第一狭過ぎる。どうしてもというなら、この円錐の両側にも出入り用の開口部を設けて欲しい。オリジナルモチーフを育てていこうとすることには賛成だが、どの場所に建てても同じ…ではなく、その土地にあったアレンジメントの模索はして欲しい。
内部はその円錐のおかげでちょっと変わった雰囲気と、前面ガラスの恩恵で明るさを味わえるが、全体的にせせこましい印象がある。まだオープンから間もない時で、人が多かったのもあるだろうが、これだけの空間をもちながら狭さを感じると言うのはどうだろう?カフェの乗っかる逆円錐の1階部分がトイレになっているのも、なんとも工夫がないと言うか。
そしてさらに決定的な欠点があった。新美術館から六本木ヒルズまでシャトルバスが運行されており、帰りはそれに乗るべく乃木坂駅連絡口付近のバス乗り場に行くと、「満員で20分後の次の便になる」とのこと。それなら歩こうかと思ったのだが、その乃木坂口から麻布トンネル方面に行こうとすると延々建物内の端から端までとアプローチを歩かされるのだ。そこに階段があれば降りるだけで済むものをなんとも効率の悪い…。
というわけで、この新美術館、決して悪くはないのだが、どこかちぐはぐで、5大粗大ごみと言われた東京国際フォーラム(小生は好きだが)にもはるかに及ばないものだった。ロゴにしても佐藤可士和氏のデザインらしいが、「新」と言うよりは「薪」に読めてしまうのがどうも…、でもこの美術館の実態を表していると思えば妙に納得できたり。
六本木界隈はあの醜悪な六本木ヒルズに始まり、この新美術館と、ちょっとマズい。小生が幼少時期を過ごした地域だけに残念でならない。これで月末オープンするとされるミッドタウンまでセンスのないものだったら・・・。ビジョン無き再開発の末路である。