かみさんの誕生日でもある先月19日に新しい我が家が完成しました。
築40年を超える我が家、それなりに手を入れる時期に来ていたけれど、今回様々な条件やタイミングが重なって、リノベーションが施されました。
雑誌で紹介されるような吹き抜けや、間接照明などによる「魅せる空間」、また、太陽光発電や床暖房などの「便利設備」は一切ありませんが、担当していただいた工務店や設計士さんたちのおかげで質実剛健的な、住んで使いやすく居心地の良い、ある意味自分たちらしい家ができたと思います。
ひとつには、子供がなく、夫婦合わせてフルムーン条件を満たすほどの年齢だからこそ、若い頃のような虚勢を張ることもなく、うまく割り切りができたことが挙げられます。かみさんはキッチン、自分は事務所兼自室を最重要エリアとして予算を割いた反面、トイレや風呂は最低グレードに抑えるなどのメリハリもつけられました。
また、あれこれ凝るほどの予算はなかったものの、設計士さんにはあらかじめ3つの要望を伝えていました。
深い軒
技術がいくら進んでも、日本の風土に合った必須アイテムとして、「深い軒」に勝るものはありません。陽の高い夏は日差しを和らげ、陽の低い冬は光と暖かさを部屋に取り入れてくれるだけでなく、強い紫外線や風雨から外壁を守ってくれます。
2階は75cmとごく一般的な軒の出ですが、1階南側に設けた奥行き1500あまりのデッキを覆う深い軒ができました。この一見贅沢な空間はリノベーションだからこその産物と言えるかもしれません。
北窓
通常、北側の窓というのはあまり考慮されませんが、じつは南側の窓というのは、日差しのためカーテンを閉めてしまうことが多く、むしろ北側の方が、景色を眺めるという窓本来の用途に適しているうえ、その景色もいわゆる「順光」によってクッキリと色鮮やかな状態で眺められます。
2階事務所は南北対称に大きめの窓を設置、野中の一軒家ならではと言えますが、両方にデッキを備えたダイナミックな空間となりました。(右側が北です)
自然素材
もともと工務店さんが林業系の会社のため、より安価に自然素材を取り入れられるメリットがありましたが、予算の許す限り取り入れたいものでした。
自然素材はメリットと同時にデメリットもあって、どうしても反りや歪みが避けられません。でも、自分たちにとって大きな予算と労力を注ぐせっかくの家、完成した時が一番きれいで、あとは汚れていくだけ…ではあまりに寂しすぎます。時を経るとともに生まれる自然素材の味わいはデメリットを補ってあまりあるものですし、何より部屋の空気が違います。
天井と床板にはパイン材、室内壁はすべて珪藻土(エコ・クイーン)仕上げとし、お客様を通さないような部屋は珪藻土をDIYすることで、コストを削減しています。
外側のデッキはイタウバ、軒天には杉板を張って、外壁はどうしてもサイディングが嫌だったので、ここは頑張って通気モルタルを採用しました。
工務店や設計士さんとともに家の設計に関わることは、とても新鮮で刺激的なことで、時には疲れ果てましたが、その分愛着のわくものとなりました。1年以上にわたって尽力してくださった工務店社長、設計士さん、そして棟梁など、大変お世話になりました。敬意を表して、この家の名前をそれぞれの頭文字をとった「atelier ISMO」とつけようかなどと考えています。
文字通り終の住処というわけですが、1日でも長く住めるように今後はより一層健康に気を配って、モリモリ仕事をしないといけないですね。
今回は大きな3つの要望を紹介しましたが、またおいおい、細かなところを紹介して、同じような目標を持たれる方のお役に立てればと思っています。
最後に、我が事務室に家具を入れ終わった様子をば。まだスピーカーのセッティングに迷い中。