ライバル登場

先日、フォルクスワーゲンからポロのスポーティグレード、GTIが登場した。本国に先んじてのデビューだと言う。

比較表
たしかにスズキのスイフトスポーツも、実用ハッチのスポーティー版と言う意味では近いところにいるのだが、価格も大きく違っているし、今回のPolo GTIこそが、ライバルとしてガチンコ勝負できる初めてのモデルと言えるだろう。
ディメンションではFIESTA STがPolo GTI（2ドア）よりも5mm長く、25mm幅があって20mm低い。それに伴ってホイールベースはFIESTAが15mm長く、トレッドは前後それぞれ50mm、25mm広い。大体同じくらいの大きさだが、重量はPoloが1180kgと50kgも重い。
動力性能に関しては、1.8リッターターボ（Polo）と2リッターNAの違いはあるが、パワーや0-100km加速、最高速度ともにほぼ同じか、ほんのちょっとPoloが上回る。しかし軽い分だけパワーウェイトレシオはFIESTAが有利か。
ボディに目を移すとさすがはVWと言うか、FIESTAよりも数段品質が高く見える。全体的にGolf譲りの外観だが、個人的にはGolfよりも良いデザインだと思う。ヘッドライト下の面が美しい。ただしフェイスリフト経験車なので仕方ない部分もあるが、リアがフロントに比べてちょっと女性的な感じでテイストが変わってしまうところが惜しい。インテリアに関してもFIESTAより幾分よく出来ており不満はないが、欧州では販売が開始されたFIESTAのマイナーチェンジ版と比べると、同じか逆にPoloが少し劣ってくるかも知れない。ただ、装備も当然のようにカーテンエアバッグや横滑り防止装置等が標準装備で、価格がFIESTA STよりも20万円以上も安いのだから、並べておいてある場合にどれだけFIESTAを選ぶ人がいるだろうかというくらいのバーゲンプライスぶりだ。装備も考えれば国産小型車も比較対象になってくるだろう。
また、Poloでいいところは5ドアのGTIも設定されているところだ。確かに3ドアの方がスポーツには適しているかも知れないが、実用重視のクラスにあって、やはり後席ドアの便利さは代えがたいものがある。こういった選択肢を用意するのも、本来メーカーの良心なのではないかと思う。せっかくなので外観もブラックアウトしたグリル周りを選べるようにしたらもっと良かったかも知れない。ノーマルのままで十分スポーティで品もあるし、無理にGolfと似せてしまう事で、オーナーに格落ち感を与えてしまう危険性もある。
というわけでFIESTA完敗…となりそうだが、乗ってみないと分からないけれど、FIESTAオーナーとして思い当たる残った砦の1つは運動性能だろうか。FIESTAが同じような性能で20万円高いとはいっても、輸入車特有のマージンではなく、現地価格とほぼ同じかかえって安いくらいなので、それだけの事をしているはずだというのもある。やはりSTにはWRCの流れを汲むチームRSのバックボーンがあり、プロスポーツならではの哲学がある。一般のチューニングとは違うその哲学とは、まず安全である事、その上で走って楽しく、実用を重視する事だ。プロスポーツを経験している開発陣だからこそ、いたずらな性能アップよりも骨太な思想とバランス感覚のもとにクルマ作りをしていると思うからだ。なーんてエラそうな事を言いながらアッサリ逆転されちゃうかもしれないけれど、FIESTA STの足回りはそう簡単に追いつけないとは思っている。ただし、FIESTA最大の汚点、フットレストはPoloには装備されているだろうか？入手した資料ではちょっと確認できなかったのだが、きちんと装備されていれば、Polo、それだけで大幅ポントアップだ。
そしてもう一つの砦はやはりデザイン。質感に関しては負けてしまっているし、なかなか評価はされていないけれど、デザインは質感だけではない。FIESTAは近くで見てフィニッシュこそ甘いかも知れないが、少し離れて眺めた時の存在感と躍動感はかなり高いレベルにあると感じる。日本車に囲まれているとつい近視眼的な見方になりがちだが、ベーシックなグレードのクルマだからこそ、こういったデザインの回答ももっとあっていいと思う。
結局はPoloもFIESTAも優れたクルマであることには変わりなく、一個人として買い換えを重ねる事は出来ないけれど、お互い切磋琢磨して、今後も国産車の良いお手本になってもらいたいと願う。