AJAと不思議な巡り合わせ

スティーリー・ダンのAJAと言えば、もはや説明不要の大名盤。

その音は、30年経った今でも古くなるどころかますます輝きを放つほどで、以前聴き比べの項でも書いたように、すでにリマスターCDと国内盤LP、AA盤、AB盤と所有し、もう買い増しする事もないと思っていた。

しかし、そこに飛び込んできたのが再発の情報。ユニバーサル・ミュージックが「名盤LP100選」として、ジャンルを問わず同社から選んだ100タイトルを完全限定200g重量盤で発売するというものだ。そこにAJAも(ガウチョも)入っていて、8月8日(ガウチョは10月10日)に発売される予定だった。ちょっと面白そうだと思ったのだが、なかなか売ってるところがみつからず、ネットであれこれ調べているうちに、どうやら発売延期になっていたことが分かった。と、同時に別の情報も見つけてしまった。

それは、米CISCO MUSICが創業30周年記念としてAJAのリマスターLPを限定販売すると言うもの。こちらはシリアルナンバー入りで、盤は180gと若干軽いものの、驚くべき事にドナルド・フェイゲンと、当時の録音エンジニアであったエリオット・シャイナーの立ち会いのもと、オリジナルのマスターからリマスターした音源を使用し、デジタルのシステムを一切通さずカッティングされた、まさに21世紀のAJAと呼べるものらしい。

すでに8月1日に発売されており「こっちの方が全然面白そう」とさっそく注文したのが8月19日。折しもスティーリー・ダンが7年振りに来日して公演したビルボードライブの初日翌日だった。ライブはもちろん行きたかったのだが、19000円~と高額なうえ、もともとライヴ向きのユニットではないし、94年の来日時に「一度は変態のご尊顔を」と代々木体育館まで観に行ったこともあって諦めた。

そして翌日20日飛び込んできた山口小夜子さんの訃報…。そう、AJAのジャケットに映っているのは山口小夜子さんその人なのだ。AJAと言うのは日本では「彩」などと訳されていたが、実はアジアのことで、彼らのアジアへの憧憬の念から山口小夜子さんの起用となったと言う説もある。彼らがステージで訃報に対するコメントをしたかどうかは知らないが、自分にとっては奇しくも彼女の追悼盤のような形になってしまった。

30年の時を経て、新たな生を与えられたこのレコードには、山口さんの魂も籠っているのだとおもいつつ大事に聴いていきたいと思った。
史上まれに見る大名盤のジャケットを堂々と飾った山口小夜子さんのご冥福をお祈り致します。

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